新年度が始まる前に、振り返りをします。昨年10月に、嬬恋郷土資料館による鎌原地区発掘調査現地説明会に参加しました。まず、令和6年度延命寺跡確認調査の説明を聞いてから、大笹温泉引湯道跡へ移動し見学しました。その後、嬬恋郷土資料館に戻って解説を聞きました。
延命寺は14世紀ごろに創建され、住民の信仰を集めていましたが、天明の噴火で地中深くに埋没してしまいました。1985年から6年に渡り発掘調査が行われ、出土した仏具や生活用品が資料館に展示されています。木材が炭化せずそのままの形で残っていることから、ここに流れてきたのは土石であり、溶岩ではなかったと分かります。


森の中では、天明の噴火後の救済復興事業として行われた温泉引場工事の跡を見学しました。噴火によって、鬼押出し溶岩の末端付近の水脈が溶岩の熱で温められた温水を、6km離れた大笹の宿まで引くという事業です。被害の少なかった隣の大笹村の名主の黒岩長左衛門がこの事業を計画し、賃金を払って被災者を救済し、地域の活性化につなげていきました。資料館館長の方の想像力を刺激するお話を聞きながら、工事の様子を思い浮かべました。温水の温度が次第に低下し、20余年後には引湯が廃止されましたが、この湧き水は鎌原用水として現在も生活用水や稲作に使われています。











天明の噴火はたくさんのことを教えてくれます。その悲劇からどのように人々が力を合わせて乗り越え、この美しい村を作ってこられたのかを思い、頭が下がる思いです。この引湯事業は、噴火を機に暮らしが一変してしまった被災者に働く機会と生きる意欲を与えたと言われていますが、現代に照らし合わせて復興とは何かということについて深く考えさせられます。
資料館では、ガイドのM先生に解説をしていただきました。最初に資料館の立体地形模型のところで、吾妻火砕流、鬼押出し溶岩流、鎌原土石なだれがどのような範囲で発生したかを説明していただきました。そのおかげで、自分の住んでいるところや、鬼押しハイウェー沿いの地形の変化を意識して見るようになりました。
また、温泉引場工事のおかげで鎌原用水ができ、その水を使って、美味しい鎌原米が栽培されていることを知りました。(ただし、温度が常時4℃で冷たすぎるため、小熊沢からの水と合流させて温度を調節しているそうです。)また、在来種の鎌原きゅうりのことも教えていただきました。鎌原の美しい自然と暮らしのお話が聞けて感動しました。
この日が初めてM先生にお会いした日です。その後、先月の嬬恋学では、嬬恋の自然と高山蝶のお話を聞かせていただきました。もっとたくさん学びたくなり、資料館友の会に入会しました。これからの活動が楽しみです。